「西園寺様、顔色が良くありませんよ。」
バックミラーで俺の顔が見えたのか、執事の西山が心配そうに見ているのが見えた。
「当たり前だろうが。唯那が無事か分からねぇのに平気な顔をしてられるか。」
もし、目が覚めないようなことがあれば俺は生きていけない。
「龍我様は本当に唯那様のことを愛していらっしゃるのですね。」
「西園寺財閥を継ぐような男が一人の女しか見れねぇのはおかしいか?」
「おかしいことなどありません。
唯那様が西園寺家に来られてから、龍我様は変わられました。
私はとても嬉しいですよ?」
「…………嬉しいか。
俺は今まで欲しい物は何でも手に入れてきたし、俺の思い通りにならないことは一度もなかった。だが、唯那だけは俺の思い通りにはならねぇ。
俺がどんなに惚れさそうとしても好きにはなってくれねぇ。
もう、どうすればいいかも分からない。
本当ダセェよな。」
「そんなことはありません。
一人の女の人を長年愛し続けることはそう簡単に出来ることではありません。
それに、唯那様もこの短い間に龍我様のことを知れたはずです。
龍我様が変わられているように、唯那様も何か変わられている部分があるのではないでしょうか?」

