「佐倉さんが島崎さんだとは想わなかったけど、まさか佐倉さんの名前を西園寺様が覚えていたなんて…………」
竜ヶ崎は地面に崩れるように座り込んだ。
「だから、唯那を傷付ける奴は許さねぇ。
竜ヶ崎、それとそこの4人の会社とは取り引きを止めさせてもらう。」
「そんな…………!」
「本当は唯那にやったことをやり返してやりたいが、唯那はそんなことをして喜ぶ女じゃねぇからそれだけは我慢してやる。」
「西園寺様っ……………!!」
「勿論、この学園からも去ってもらう。
今度また唯那に手を出して見ろ。次は唯那が何を言おうと、お前らぶっ殺すからな」
そう言うと俺はその場を立ち去り、後から来た執事の車で唯那が搬送された病院に向かった。
俺はいつの間に唯那をこんなに好きになった?
唯那を練習試合で見つけて西園寺家に連れて来た頃は、佐倉唯那としか見ていなかった。
どんだけ嫌がられてもしきたりを理由に唯那と結婚出来たらいいと思っていた。
俺のことを忘れていても、西園寺財閥の跡取り
という肩書きを使って惚れさせればいいと思っていた。
だが、あいつは俺が西園寺財閥の跡取りだとしても尚婚約を拒んだ。
そんな女は唯那が初めてだった。
俺はしきたり上、婚約者を変えれば西園寺財閥を継げない。
だから最初は唯那を惚れさす為に必死だったっていうのも0ではなかった。
だが、いつの間にか俺のほうが唯那に惚れていた。
それは思い出だった佐倉唯那に対してではなく、島崎唯那に対してだ。

