それからすぐに救急車が到着し、唯那は病院に運ばれていった。
俺も一緒に乗って行きたかったが、まだ片付けなければならないことがある。
俺の怒りは頂点に達していた。
「お前ら、唯那が俺様の婚約者だってことは知ってるよな。
どうしてこんな目に合わせた!」
俺は我を忘れて大声で怒鳴った。
その姿を見て4人は怯えているが、竜ヶ崎だけは別だった。
「だって、西園寺様が私のことを忘れるから………」
竜ヶ崎の口から出た言葉は意外なものだった。
「幼稚舎の頃、いつも一人だった西園寺様に話しかけたの覚えてますか?あれは、私なんですよ?
昔はあんなに仲良くしてたのに、今は話すこともなくなってしまったけれど、私はあの頃から西園寺様のことを好きだった………」
いつも一人だった俺に話しかけた……それは唯那のことだろう。
だが、何故それを知ってる?
まぁ、鵬龍学園は幼稚舎からの奴が多いから知ってる奴が居ることは確かだ。
だが、こいつは何故その女が自分だと言い切れる?
俺が名前も顔も忘れているとでも思っているのか
「私はそんなにも前からあなたのことが好きだったのに、どうして庶民の島崎さんを婚約者になさるの?
あんな庶民よりも私の方が西園寺様のことを長く想っていたのに………」
間違いない。こいつは唯那になりきって自分を婚約者にしようと企んでいる。
誰がその手にのるかよ。

