いつもの私なら、反抗して抱き締める手を離すのに、和真さんの言葉のせいか私の顔は何故かとても熱かった。
「西園寺、もうそろそろ離して…………
準備、しないといけないんでしょ?」
私は一生懸命話すけど、何故かドキドキが止まらなかった。
『唯那は跡取りの事が好きじゃないのか?』
頭の中には何故か和真さんの言葉があった。
私が………西園寺のことを好き………?
前までは好きっていう気持ちが分からなくて、このドキドキが何なのかが分からなかった。
でも、今はなんとなくだけど分かる気がする。
私は、西園寺のことが好きなのかな?
自分の気持ちに正直になってもいいかな?
「西園寺様、やっと見つけましたよ。」
その時、西園寺の担当の美容師さんが走ってやってきた。
「ちぇ。……ま、行くしかねぇか。
唯那、今度は俺が格好いいところを見せてやるから会場でしっかりと見とけよ。」
そう言うと私を抱き締める手を緩め、控え室に向かう。
その姿が何故かかっこよかった。
今まではそんなこと考えたことなかったのに…

