唯那の出番が終わると会場からは割れんばかりの大歓声が鳴り響いた。
「やっぱり、唯那ちゃんはすげぇな。
って、龍我もそろそろ準備しないと駄目なんじゃないか?」
「……あぁ。」
晃に言われ、俺は唯那の出番が終わってから会場を後にする。
控え室の近くまで来ると目の前には先ほど出番を終えたばかりの唯那が俺が居る方向へ向かって走っていた。
「あ、西園寺……」
俺の顔を見ると足を止める唯那は、息が荒かった。こんなに走っているのは誰かを探しているのか。
「どうしたんだよ、そんなに走って。」
「……和真さん、見なかった?和真さんにお礼を言いたくて探してるんだけど………」
唯那は息を切らしながら話している。
出番が終わって探す男は俺じゃなくてあの男。
そう思うとイライラして気付けば唯那を抱き締めていた。
「俺以外の男を探してんじゃねぇよ。」
俺はそっと唯那の耳元で囁いた。
「だ、だからお礼を言いたくて……
和真さんが綺麗にしてくれたから、私自信を持って歩けたの。
そのお礼を言いたかったんだけど会場にはもう居なくて控え室に戻って来たんだけど………」
唯那は一生懸命、理由を話すが俺にはそんなことはどうでもよかった。
「だからって許せねぇな。
唯那は俺の婚約者だ。俺以外の男のことを考えんじゃねぇ。」
俺は更に強く唯那を抱き締める。
いつもなら反抗する唯那だが、今日は何故か大人しかった。

