神谷さんが嘘を言っているとは思えなくて黙り込んでしまう。
西園寺の婚約者に対する思いは分かったし、私を認めてくれているのも分かった。
でも、西園寺が本当に好きにならなきゃいけないのは私じゃないことも同時に分かってしまった。
「今は私の言葉を分からなくても構いません。
ですが、龍我様のことは信じてはもらえないでしょうか?」
とりあえず、私は大きく頷いて神谷さんは納得してくれたみたいだった。
「では、屋敷の方に戻りましょうか。
唯那様とお話する為に少し遠回りを致しました。勝手なことをしてしまい申し訳ありません。」
どうりで全然屋敷につかないと思っていたわけだ。
でも、だからといって神谷さんを責めたりする感じではなかった。
家に着くと西園寺に心配されたが、それだけで何かがあるわけでもなかった。
神谷さんが居ることを分かっているはずなのに、事故じゃなくてよかったと心配してくれる西園寺。
西園寺の第一印象が我が儘だった私に、西園寺の優しさがどんどん追加されていって第一印象が消えていくのだろうか。

