考えてみれば、俺、12年もあいつを思い続けてるだよな。
当の本人は俺のことなんか忘れているのにな。
「俺もな、お前に負けられねぇんだわ。
なんせ12年前から俺の目には彼女しか見えてねぇんだからな。」
「12年…………?」
俺が唯那に対して遊びだと信じて疑わなかったのか、12年という言葉に反応している。
まぁ、普通は12年間片思いをし続けるなんて俺くらいだろうな。
「12年も遊びで想うやつがいるか?俺は物心がつく前から唯那が好きだ。
だから、相手が誰であっても譲るつもりもなければ手放すつもりもない。
俺はそんくらいあいつに対してはマジだ。」
俺もここまで自分が一途な男とは思わなかった。
…………というか、そういうことを考える余裕なんかなかったからな。
まぁ、隣のコートで偉そうなおっさんの話を聞いてる誰かさんは俺がここまで彫れているなんて知る由もないんだろうな。
今の俺があいつに好きだと言っても冗談としか思わないんだろうな。
俺が12年前からお前しか見えてないと言ったら笑うんだろうな。
だから、お前に想いを伝えるのはまだ先だ。
その前に俺しか見えないようにしてやるよ。
「では、これより全国大会決勝戦を開始いたします。」
その言葉で俺たちは話すのを止めて、サーブ権を決めて試合を始めた………

