唯那が泣いた姿を見たのは初めてだった。
今まで俺に刃向かうことはあるが、唯那が俺に泣いて訴えたことはなかった。
そんなに白樺学園に戻りたいと思っているのか、俺は初めてそんなことを考えた。
唯那がアップをしている所に行くと、唯那の目には涙はなかった。
「もう、涙は止まったのか。」
俺が何故、唯那が泣いていたことを知っていることにびっくりしているのか唯那は言葉が出ていなかった。
「さっき、白樺学園テニス部と会ってただろ?
偶然見えただけなんだが……もう大丈夫なのか?」
前の俺なら理由も聞かずにキレていたと思う。
だが、あんな姿を見せられるとそんな態度は取れなかった。
「うん、もう大丈夫。さっきは先輩の言葉に感動して泣いちゃっただけだから。」
やはり、唯那は白樺学園に戻りたいと思っているのか。
唯那を泣かせたのは俺のせいなのか。
そんなことを思うと唯那に申し訳なかった。
「唯那、もし白樺学園に戻っていいって言ったらどうする?」
勿論、唯那を手放すつもりはないが試しに聞いてみる。すると、彼女は俺に笑みを見せた。
「……さっき、約束したじゃない。一緒に優勝するって。その言葉忘れたの?」

