部長には感謝してもしきれない。
部長が居なければ、私は今、ここには居ない。
初めての全国大会で一回戦だけ勝てればいいと思っていた私に、『自分が今までしてきたことを信じなくてどうする。』と言ってくれた言葉があったから無駄な緊張はせずに試合に臨めた。
そんな部長に対して、私は何も返せていない。
「……部長。……部長に今まで支えてもらったのに私、何も返せてない。
なのに、こんな形で白樺学園を去ることになって、裏切るようなことをして……
本当にごめんなさいっ……」
気付けば私の目には涙が溢れていて、それ以上は何も言えなかった。
すると、玉城部長は私の元に来てそっと抱きしめてくれた。
「………部長?」
「唯那、それは違う。唯那は俺に……俺達に沢山の希望を与えてくれた。
俺達はテニス部団体戦の強豪校だ。団体戦は出場校が少ないから全国大会ベスト3には入ってた。
だが、実力を持った強豪が出場する個人戦では全国大会に出場はするが他のメンバーはいつも一回戦敗退。俺はベスト8が限界。
それが当たり前だと思ってきた俺達に唯那は全国大会個人戦優勝を見せてくれた。
それがどれだけ俺たちを変えてくれたか……
唯那が優勝してくれたから俺たちはそれからの練習を見直してずっと頑張ってきた。
ここに居る俺たちは去年までの俺たちとは違う。」

