「ねぇ、唯那ちゃん。」
「はい。」
「本気で打ってきて。
俺、手を抜かれるのとか好きじゃないから。」
「…………分かりました。」
ボールを地面に着いてから目を閉じる。
集中力を高めて精神を統一する。
いつ試合でサーブをする時は、こうして心を落ち着かせていた。
気持ちが落ち着くと目を開き、ゆっくり高いトスを上げると、思いっきり後ろからラケットを振り落とす。
本気で打ち込んだサーブはサービスラインの手前でバウンドしてからすぐに彼の横を通り抜けた。
すると、それまでブーイングをしていた女の子達や周りで練習していた部員達が私達のコートを見つめ、静寂に包まれる。
「15-0!!」
と、審判をしている人の声が沈黙を破る。
狙ったコースに入ったサーブは文句なしのサービスエースだった。
「嘘だろ………?晃はうちの部のNo.2なのに一歩も動けないなんて………_」
前の練習試合に来てなかった部員は私のことを知らないみたいで驚きを隠せない様子だった。
「………………さすが唯那ちゃん。
あの晃でも相手にならない。」
彼の実力を知っているレギュラー全員も唖然としていると……

