テニスコートに来たのはいいけど、白樺学園で使っていた私のラケットが入ったバックは手元になかった。
あの時はまさか西園寺に連れてこられるなんて思いもしなかったから部屋に置いたままだった。
「とりあえず俺の予備のラケット使いなよ。
慣れないから使いにくいかもしれないけど、せっかくだから打ち合いしよう。」
そう言われて彼からラケットを受け取ると、そのまま空いているコートに入る。
「あの女、何者?」
「レギュラージャージ着てるだけでも許せないのに何でコートに入ってるの?」
「まさか晃様と勝負するつもり?
晃様はあんたなんかよりも強いんだから!」
と、女の子達のブーイングが聞こえてくる。
どこの誰だか分からない女がいきなりレギュラージャージを着てコートに入ったら彼らのファンに睨まれるのは当たり前だよね………
とりあえず彼女達のことは置いといて、ベースラインに立つ。
私からのサーブらしく、部員の一人からボールを受け取る。

