『これ……』
それは私があの時に捨てたボールや練習着だった。
『いつか使う日が来るじゃないかって思って取っておいたの』
『お母さん……』
見たくなくて、捨てたもの。
それをお母さんは大事にとっておいてくれていた。
『これから大変だと思うけど頑張ってね』
『ありがとう……』
力強く頷いた。
今まで心配させてしまった分、頑張りたい。
もう逃げないよ。
「じゃあ頑張ってね」
「うん行ってきます」
泉ちゃんとそんな会話をすると、私は部室に向かった。
初めての部活に参加する日。
みんなの輪の中に入っていけるのか心配だった。
それにただでさえ体力が無い状態だ。
練習についていけるかも分からない。
少し不安に思っていた時。
「よっ」
私は誰かに肩を肩を叩かれた。
「陽介!」
それはにやり、と笑う陽介だった。
「なんだよ~上がってんじゃん?」