俺のボールが手から離れて床に落ちていく。


何回かのバウンドを経て、ボールは床を転がっていった。


「だから……もう一度、

後悔のないところまではやってみる」


「本当か?」


「うん、もう疲れちゃった……逃げてるの」


そう言って笑った彼女の顔はとても明るくて

まるで心の底から笑っているように見えた。



5月の風は少しの冷たさと共に優しく吹く。


少し出遅れた植物の芽のように、

彼女は止めていた1歩を踏み出したーー。