だからずっと口にはしなかった。
「そんで復活して来てみればもう、俺の場所は後輩に取られてたってわけ。
バカだなって思うだろ?
勝ちたいから頑張ったのに、頑張ったせいで体調崩して……
その間に取られちまってるなんてさ。
それから全部アホっぽくなってさ……その日から部活は無断欠席」
それでも、沙奈の気持ちが変わってくれるのなら……。
俺は自分の手を握りしめた。
「それからはひどい有様だったな。
ボールも体育館も見るのすら嫌になって、こんなバカバカしいスポーツ二度とやるかってバスケの道具もシューズも全部捨てた。
だけど……音、聞くたび、目に入るたびやりたくなるんだ」
クツの擦れる音、ドリブルの音。
聞こえてくるたびに思いだして、足がそっちに向かう。
嫌いなんて言うクセに、
もう2度とやらないと言うクセに
足は、心は、身体は全部バスケを求めてた。
「本当の自分は嫌いになんてなりたくなかったんだよ」


