その瞬間、俺はバックしてシュートモーションに入った。
沙奈がフェイクだと気づき、手をあげて前に出る。
しかし一歩遅く、シュートは俺の手から放たれた。
ボールは弧を描くようにゴールをくぐり抜けた。
ーースパ。
ボールが地面についてダン、ダン、ダン、とバウンドする。
その音は徐々に早く、徐々に小さく体育館に響き渡る。
「俺の勝ちだ」
汗を拭いながらそういうと、彼女はぐったりと床に座り込んだ。
ぐっと顔をうつむかせて、
力強く手を握りしめている彼女の気づき声をかける。
しまった。
本気でやり過ぎてしまった。
彼女は久しぶりだったのに。
「悪りぃ……気分悪くなったか?」
体力がついていかないのも無理はないだろう。
「保健室に……」
慌ててそう言った時、
彼女はゆっくりと顔をあげた。
「悔しい……っ」
――ドキン。
その顔は涙に濡れていた。


