リトライ。




ーーガンッ!


「ダメか……」


放ったボールはゴールのふちにぶつかり、音を立て跳ね返った。


そしてその反動で俺の手元にボールが戻って来る。


もう一度、ドリブル。

お互いに睨み合う。


「こんなに強いのに」


ポツリとつぶやいた言葉に彼女の力がわずかに抜けた。


「それでもダメだったんだから、きっと私には向いてない」


目は俺の方を見ていなかった。


だからこそ、救ってやらなきゃいけない。


そうじゃないんだって。


好きじゃないんだ。


やめたんだと言葉で言って、

本当は諦めたことを心の中で悔やんでる。


もう一度やりたい、そう思っているくせに。


怖くて踏み出せないから、言葉で強がって納得させて逃げていく。


本当のお前はそうじゃないだろ。


本当は嫌いなんていいたくないんだ。


俺はドリブルをすると、沙奈を抜かそうと身体を前に傾けた。


相手が反応して後ろに足を一歩引く。