負けるわけにはいかない。


ゴール下。
彼女がシュートモーションに入ると同時に俺は手でブロックした。


「……っ！」

コロコロとボールが転がり、逆サイドに向かう。


「現役だよ？」


さっきの沙奈と同じように笑ってそう言えば彼女は悔しそうな顔をした。


ほら、そういう顔。

今でも出来んじゃねぇか。


今度は俺の番だ。

ボールを持ちドリブルを始める。


沙奈のディフェンスはどんなに左右に揺さぶっても隙が無かった。


すげぇ……。


もったいねぇな。

現役でやられていたら抜けなかったかもしれない。


俺は右サイドにドリブルを突き、

レイアップに行くと見せかけてターンしてからジャンプシュートを決めた。

手からゆっくりとボールが離れて行くその一瞬、

彼女は俺の動きに追いついて手を伸ばす。


指先がほんの少しかすってシュートの軌道がズレた。