「はい。一応……ですけど」
私が答えると彼は嬉しそうに笑って言った。
「ちょっとだけ時間ある?シュート練、付き合ってほしいんだ」
「え、でも……」
「分かってるよ、今日は体育館の整備をするから使用禁止だろ?
でもさ、腕が鈍っちゃうから、整備の人が来るまで……頼むよ」
「そういうことじゃ……」
私が渋ったことを別の理由だと思っている彼。
っていうか、体育館使用禁止なら、尚更ダメなんじゃ……。
「あ、自己紹介がまだだったな。俺は古谷陽介。バスケ部の1年だよ」
なんだ、先輩じゃなかったんだ……ってそうじゃなくて。
なんだか彼のペースに流されっぱなしだ。
「キミは?」
「あ、えっと……風川沙奈です。私も1年です」
流されるままに答えると彼は一緒だな、なんて言って笑顔を作る。
「沙奈」
ドキン。


