しかし、その中に陽介はいなかった。

陽介は外にあるベンチにひとり座っていた。


「陽介……、風邪ひくよ」


私が駆け寄っていき、声をかけるけど返事はない。

思いつめた背中。

ひとりにしてはいけないと思った。


でも、なんて言葉をかけたらいいのか私には分からなかった。


今までずっと彼が励ましてくれた。

ずっとそれに甘えていたんだ。

側に並べる関係でいたいと言ったのに、一歩前にいてくれる彼に甘えていた。



「悪い、沙奈。ひとりにさせてくんねぇか」


何もできない私。

そう言われて当然だ。

でもこのまま帰るわけにはいかない。


「陽介……あのね、私……」


何も言えないけど、これだけは言える。


ずっと一緒に練習してきたこの日々は無駄じゃなかったって。

だから。


「私が陽介の代わりに勝つよ」