「足を踏み出せるのかすら怪しかった。

でもその時、聞こえたんだ。

頑張れ!巻き返せるよ!って大きな声が」


さっきよりも少し柔らかい口調になった陽介。

表情は優し気だった。


「それは隣のコートで試合をしていたチームのひとりの女の子だった。


ベンチにいて一生懸命自分のチームを応援している子を見て、俺は我に返った。


自分はひとりで戦ってるんじゃないって。


ベンチのいる人、応援してくれている人全員の意志を背負ってここにいる。


こんなみっともないところ見せられないって……」


そして彼は息を吸い込むとじっと私を見つめた。


「その女の子が沙奈、お前だったんだよ……」

「えっ」

「初めてじゃなかったんだ。俺達が学校で会ったのは」

「ウソ……」


知らなかった。

陽介と私が過去に出会っていたなんて。