悔しくて、悲くて、虚しい記憶は些細なことで蘇る。


もう思い出したくない。

私はボールをつく音を聞こえないフリして歩き続けた。


校門の両脇にどっしりと構えた大きな桜の木が私たちを出迎える。

ひら、ひら、と落ちていく桜の花びらはそっと私の肩に乗りんだ。


「キレイ……」


肩に乗った桜の花びらを摘まんでふっ、と吹いて飛ばす。

宙に浮きあがった花びらは再びひら、ひらと揺れて落ちていった。


「だけど、切ないな……」



役目を終えると、どうあがいたって地面に落ちていく桜を見てなんだか自分みたいだと寂しくなった――。