「実はさ、今日。親父が近くの施設の体育館を借りてくれたんだよ。

天気予報で雨だって分かってたから……女バスも今日は外練だしオフになっちまっただろう?

だから一緒に練習どうかなって思ってさ」


「えっ、行きたい!」


陽介の言葉に私は思わずばっと顔をあげた。

そしたら陽介が「やっとこっち向いたな」なんて優しく笑うから心臓がドキドキと動き出した。


なんか……ズルい。
そういうの。


「どした?」


ドキン、ドキン。

意識するとどんどん胸の鼓動が聞こえてくる。


「なんでもない……っ」


もう一度うつむけば、陽介は私の頭をポン、と叩いた。



「じゃあ17時にそこのコンビニ前で。バッシュ忘れんなよ」

「……っ」


去っていく彼の後ろ姿をぼう、っと見つめる。

触れられた頭の感覚が今でも残っていた。



「泉ちゃんのせいだ……」


小さくつぶやいた言葉は泉ちゃんには聞こえていなかった。