「ただいま」
返事なんて帰ってくるわけないのに、いつもあたしは大きな声で言う。
お母さんは毎日夜遅くまで働いてる。
あの親父のせいなんだから。
あたしがこんなひねくれたのも、お母さんが毎日働かなきゃなんないのも、うちが貧乏なのも全部。
ある日あの親父は急にあたしたち二人を捨てて、消えた。
高校生に入って、父には新しい家族がいるとお母さんから告げられた。
その時のお母さんの顔、今でも覚えてる。
「ふう…」
家に帰るなりベッドに倒れこむ。
なんか色々疲れたな。
彼、なんて言うんだろう。
ちゃらくて、サッカー部っぽいかんじ。
「ふぁ〜、ねむ…」
大きな欠伸をしたあとに、あたしはゆっくり瞳を閉じた。