4月、少し肌寒くて、でも暖かい風が吹き始めたそんな頃。

家から少し離れた丘の上、大きな桜の木の下のベンチで私はひとり泣いていた。



「優くん・・・。」




春は嫌いだった。

さくらを見ても、この暖かい風を肌で感じても

綺麗だとか、気持ちが良いとか、私は何も感じなくなった。



「優くん、明日入学式なんだよ。私、高校生になれたよ。」


青い空に向かって話しかけた。


「本当は優くんと同じ高校に行きたかったなあ。それで、

 毎日いっしょに学校行って、毎日いっしょにお弁当食べて、

 私、そんな学校生活に憧れてたんだよ?」



優くん、私はこれからもずっと優くんだけ。

優くん以外の人なんて、愛せないから・・・。



涙を拭いて、ベンチに花を添えた。


「約束するから。」