広樹がトランプを取る番になり、
私の持つトランプへ手を伸ばす。
「あ」
と、私。
私のババが連れ去られた。
「げ」
広樹はババのトランプを見て、
一瞬ギョッとした顔をしけど、
今度は、あれ?と、
手元にあるババと、
新たに入手したババを困惑した顔で見ている。
なんでババが揃ってんの?
と思ってるのだろう。
「…気付かなかった?」
小さく声を出した。
「あ、そっか、新品のそのまま使ったからか」
「うん」
「よーし、やり直すぞー!」
しかし。
「美穂ー!広樹ー!ご飯よー!」
一階からのお母さんの声に、
私たちはトランプを片付けた。



