由紀と別れ家に帰宅すると、
いい匂いが迎えてくれた。
玄関には、2つの重なったダンボールがあった。
「ただいまー」
「おかえりー」
キッチンにいるであろう
母さんの声が聞こえた。
「飯できてるー?」
リビングに入り、そう尋ねると
美穂の後ろ姿が目に入った。
俯いていて、暗い雰囲気を放ってる。
「はーい、今出来たわよー」
母さんが最後に作ったらしいおかずを
テーブルにトンと置く。
それはスパニッシュオムレツで、
様々な野菜が入っている。
「あれ?サンマって言ってなかったっけ?」
「実家から野菜が届いたのよ。
余ったからって」
おじいちゃんとおばあちゃんは、
八百屋をやめて、
今は農業で自給自足してるらしい。
俺は、転身した彼らがすごいと思う。
「いただきます」
3人揃って食べ始めたけど、
今日も会話はなかった。



