「ご、ごめ…」
ハッとして身体を離す。
駅前だし、人通りも多い。
なんだあれ、みたいな冷めた目で
見てくる人もいた。
「あ…」
由紀は顔を真っ赤にして、
目を潤ませて俺を見上げてる。
な、なにこの子…か、かわい…。
俺もつられたのか、
頬に熱が帯びてくのを感じた。
「っ、いきなりごめんな」
「い、いや、ありがとうっ」
なんか、由紀がありがとうってのは
少し変な気がした。
それだと、俺がまるで情けをかけて
抱き締めたみたいじゃん。
身体が衝動的に動いたんだ、これは。
─────由紀に落とされるのは、
もう目前かもしれない。



