家に帰ると、
母さんも美穂も、居なかった。
…美穂は部屋、母さんは大方買い物だろう。
俺は部屋に直行する。
学ランを脱いで、部屋着に着替えていると、
「電話だ」
机に置いたスマホが、
ランプを灯し、さらに点滅している。
学校にいる間はマナーモードに
していてそのままだった。
もしかして由紀からかと思ったけど、
画面を覗き込むと、太一からだ。
電話くるにしても、
由紀はまだ帰宅途中だろうし。
「もしもし」
俺はまだ上半身裸で
下はスウェットのまま、
スマホを片手にベッドに腰掛ける。
『もしもしー。ヒロちゃーん?
広樹、今日“どう”だった?』
声が少し上ずっていて、
ニヤニヤしているのが目に見える。
んだよ、ヒロちゃんって。
少しイラッとしたが、多分こいつ、
由紀のこと聞いてるのかな。
幼なじみだし。



