「すごいね、カップルの量…」
駅前に着いた俺らは、
想像以上に男女の組が多く、圧倒された。
まぁ、俺らもその一員なんだけど。
なんとなく甘い雰囲気が漂っていて、
クリスマスのあの日を想起させた。
「広樹くん、ごめんね。
うちのお兄ちゃんが」
「いや別にいいよ」
由紀は俺と、教室を後にしてから
事情を説明してくれた。
『私のお兄ちゃんが、
美穂さんに会いたいってゆって』
由紀の兄貴。
あのかっこいい人が、何故美穂に会いたいのか。
会ったのはこの前美穂が久しぶりに外出した時の
一度きりだったはずだ。
と、首を傾げたが、
すぐに由紀が答えてくれた。
『この駅前で美穂さんと
お兄ちゃんが会ったみたいで、
なんか少し、仲良くなったらしいの』
いつの間に、と度肝を抜かれた。
今日会いたいって…
バレンタイン絡みのことだよな。
美穂、渡すのかな。
だから気合入ってたのかも。
美穂がキッチンで試行錯誤して
クッキー作りに励んでいたのを思い出す。
試作をもらっているもんだから、太りそうだ。



