太一は、地雷を踏んだと思う。
由紀は会ったことがあるから知っているが
平沢は美穂のことを知らない。
実際そうなのか否かは分からないが、
今の言い方だと太一が“美穂”に
好意があるように聞こえる。
好きな男が、自分の目の前で
知らない女の名前を晒す。
平沢は混乱したのか、顔面蒼白だ。
さっきまでりんごみたいだったのに。
「えと、美穂からは何も聞いてないから、
一旦座れ」
太一を自席に促し、
由紀と俺で今のことを釈明しようとしたが、
無情にも、チャイムがそれを遮った。
平沢は不安げにな顔で
由紀と席に戻っていった。



