いやいや冗談でしょう。
アレだ、歳上の余裕ってヤツだ。
とは思いつつ、私はパニックで涙目になる。
同時に今まで耳まで熱かったのが、
首元まで広がっている気がする。
「な、なんでですか」
そんなジョーク、面白くない…、
という意味を含めて言う。
しかし李人くんは真顔で言い放つ。
「なんでだろうね?」
「っ」
逆に聞き返されてしまった。
尚更困惑する私。
「あ、聞き忘れてた。
好きな人は、いるの?」
「……」
それは、言えないよね。
万が一、引き籠もりだってバレた場合
かなり…その“好きな人”が絞られるし、
億が一、広樹にそういう気持ちが
あるって知られたら、絶対に嫌われる。
兆が一、それが柳田…ユキさんに知られたら、
広樹との間に亀裂が入るかも分からない。
そう思うと、
杞憂かもしれないけど背筋が凍った。



