「おい、帰ろーぜ」 太一にそう呼び掛ける。 「えー?」 …このアホ。 「お、丁度いま、何か言ってるぞ広樹」 と言われると気になるもので、 チラリと中を覗く。 「って、やっべ…」 「お、おい」 佐藤が悲しそうな顔で、 扉へ向かってる。 俺の覗いている扉へと。 とっさに俺らは屈んだので 見られずには済んだが、 佐藤が出てきたらバレるぞ! 「こっちこい」 俺は太一の腕を引き、 佐藤が図書室から出たら向かうであろう 階段側とは、反対の方へできるだけ逃げる。 どうか、気づかないでくれ。