「そういや由紀…
あのハートのネックレスって
買った?」
「ネックレス…?
ああ!あれね。
ううん、買ってないよ」
「へぇ」
俺はひとり胸を撫でおろす。
その動作に不思議そうに首を傾げる
由紀だったが、
すぐに商品に目移りした。
「うーん」
「香水?」
由紀は、シトラス系の香水が陳列する
ゲージの前でなにやら唸っている。
「広樹くんって、こういうの好き?」
香水が好き、ということか、
シトラス系が好き、ということか…
どっちかよく分からなかったが
「香水だったら、シトラスのが好きかな」
と言った。
由紀は表情を輝かせた。
結局その店では、俺らは何も買わず…
おやつ代わりにアイスを頬張っていた。



