「今日楽しかったね」
紫帆が言った。
そう言われると、もう今日が終わってしまうような気がした。途端、まだ別れてもいないのに、寂しさが僕をゆすった。

「まだだよ」
「まだ?」
「そう。そういうセリフは最後の最後までとっておくものだよ」
「…………」
「私だって寂しいんだから」
紫帆はすねてしまった。むすっとした口が可愛いと思った。

銀色の箱は大和を後にした。
単調な音が線路から響く。