神様がもしいるならきっと意地悪なんだろう。
こういう時に限って時間を早く進めてしまうのだから。
電車は登戸を通過した。

「次はいつデートできるかな?」
紫帆が言った。

「そうだね、もしかしたら受験が終わるまで行けないかもな」

僕たちはついこの間までは他人だった。ふとそう思った。
不思議だ。本当に不思議。
なんで紫帆なんだろう。女性も男性も山ほどいる。なぜ僕たちは一緒になったのだろう。
偶然僕たちは同じ年に産まれ、偶然神奈川県で育ち、偶然に同じ予備校に通った。そして偶然に紫帆と出会って、今僕たちは手をつないでいる。

「なに難しい顔してるの?」
「やっぱりすごいことだよ」
「なにが?」
「全部がさ」

紫帆はきょとんとしていた。

町田の駅が遠くなっていった。