「行くぞ」
なにも言わずに、ただそれだけを言って歩き出す佐野。
恥ずかしい。やだな。
あたし今、佐野なんかにドキドキしてる。
「悪かった」
「……?」
佐野は後ろにいるあたしに背を向けたまま、ぶっきらぼうにそう言う。
「遅くなって悪かった。今度は、もっと早くお前を助けてやる」
そっけなくても伝わる、佐野の優しさ。
引き連れてくれるこの手が、佐野の態度とはうらはらに、すごく優しい。
「つーか、あんま俺から離れんな。助けてやるから、目の届くところにいろよ」
……ははっ。なんだそれ。
「やだ」
「はっ!?やだってなんだよ!」
焦ってる佐野が、おかしくて笑えてしまう。
なんて不器用なんだ。こいつ。
「……嘘。できるだけそうする」
不器用すぎて、ちょっと素直になっちゃったじゃんか。


