どれくらい時間が経っただろう?




「佐野くん、ここにいたんだ」



突然、ここに前野がやってきた。



ひとりになりたい俺に、前野は寄り添うように隣に来る。




「なんかあった?すごく不機嫌な顔してる」



「別に。してねぇよ」



「嘘だ。そういう顔してるときはたいてい仁菜ちゃん絡みのことでしょ?

……私にはわかる」



一呼吸おいて前野が言った。



「佐野くんのことずっと見てきたから、わかるよ」




驚いて顔をあげると、前野は真剣な表情で俺を見つめてた。




偽物の俺とは違う、まっすぐな強い瞳で。





「私が佐野くんのこと好きだってこと、知ってた?」





知るわけないだろう。



だからこんなに驚いてんじゃねぇか。