――バンッ!





……いた。




後ろ姿でもわかる。


屋上の端で空を仰いでいたのは、制服姿の佐野だった。



風は佐野の髪を揺らすように、優しく吹きぬけた。





「……佐野っ!」



大きな声でそう呼ぶと、ヤツはゆっくりと振り返り、あたしを見るなり驚いた顔を見せる。




「お前、なんでここに……?」



「なんでって、佐野を探しに来たんでしょうが」



それ以外の理由があるもんか。



言いながら、スタスタと佐野のもとへと歩みよる。



だけど少し、佐野の様子がおかしいことに気づいた。



また空を仰いで、あたしと目を合わせようとしない。


その行動は、あからさますぎるほど。




……佐野……?




「お前さ……」




隣に行く前に、あたしは佐野の背後で立ち止まる。



それくらい、佐野の声はこれ以上ないくらい切ない声だった。