「もうすぐ文化祭が終わるね。
……空も暗くなってきたし、私は後夜祭の準備に行かなきゃ」
「あ、そっか。うん……」
窓の外を見ていた前野さんにつられて、あたしも外を見た。
さっきまで赤みがかかった空も、暗くなっていく。
「佐野くんなら、屋上にいるよ」
ふいに、前野さんがそう言った。
「えっ?」
「実行委員のクセに、後夜祭の準備サボってる。
伝えといてくれないかな?私が怒ってるって。
佐野くん、仁菜ちゃんの言うことなら聞きそうだし」
ニコッと笑った前野さんに、
「わかった」
あたしは強く頷いた。
そして、走って屋上に向かう。
本当になんだってんだ、まったく。
あたしをこんなにも走らせて。
こんなにも惑わせて。
いい加減にしろ、佐野悠月。
あたしにも言わせろ、好きって言葉を。
そしてあたしは、辿り着いた屋上のドアを勢いよく開けた。


