「まぁでも、あのくらい挑発しとかないと張り合いないし。今回は許してよ」
「……はぁ」
あたしは何が何だかよくわかんないながら頷いた。
「ん。じゃあこの話はおしまい。
……聞いてくれてありがと、仁菜」
そのやわらかな声質の〝ありがとう〟は、あたし達の今までの距離を埋めるには十分だった。
「こちらこそ、ありがとうございました」
止まってた初恋の時間は、やっと終止符がうたれる。
やっと、あたしの時間が取り戻された。
「ん〜、やっぱもったいないな」
「え?」
今、いい感じで終わる雰囲気になったのに、先輩がジーッとあたしを見つめてきたのでキョトンとしてしまった。
その隙をついたかのように、
――チュッ。
おでこに軽く、なにかが触れる。
「……!!!」
「一度もしたことなかったし、そのまま佐野くんに譲るのは釈だから、最後に」
ビックリして先輩を見ると、ニヤッと子供っぽく笑っていて、
あたしが今まで思い描いてた大人っぽい先輩とは、まるで正反対だった。
だけど嫌いにはなれなくて、無邪気な素顔の先輩が見れて嬉しかった。


