「先輩……、ごめんなさ……っ、ごめんなさい……」
声にならない言葉を紡ぐので、やっとだった。
裏切られたと思い込んで、先輩のことが怖くなって、避けていた。
あたしは、最低なことをしたんだ。
「勝手に〝彼氏〟としての理想を押し付けて……ごめんなさい……っ」
「泣かないで、仁菜」
先輩はポンッと手のひらをあたしの頭に乗せ、優しく撫でる。
まるで、子供をあやすみたいに。
「本当の自分を隠してたのは俺だったんだ。こんな俺じゃ、結局は仁菜を笑顔にすることなんでできない。
……偽物なのはあいつじゃない、俺の方だ」
「……え?」
含みのある笑みを浮かべ、独り言のようにつぶやいた先輩に、あたしは首を傾げる。
「……仁菜にはもう、大切なヤツがいるんだろ?」
ドキッ。
そう問われて、真っ先に思い浮かんだのは佐野だった。


