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そのあと、玄関に行くとあいつが制服に着替えて待っていた。


手には俺のブレザーがある。




「佐野……」



俺に気づくと、さっきと同じ、どこか不安気な表情で俺を見つめるこいつ。



たぶん、聞きたいことが山ほどあるはずだ。



だけど言えねぇ。



あいつに宣戦布告された、お前を取り戻されるかもしれないって、言えるワケねぇだろ。


無理だよ。



だって言ったら、お前はすんなりとあっちに行っちまうんだろ?



そんなのイヤだ。





「おら、早く帰るぞ」



「あの、佐野……ごめんね」



「あ?」



「勝手に待っててごめん……。あと、メイド服着て、ごめん」




靴を履きかえてる俺にブレザーを手渡しながら、弱々しく謝るこいつ。



……クソ。



こんなピンチで余裕ないときでも、可愛いなとか思っちまう。