でも……負けたくない。
俺は一度、過去にお前を諦めた。
あのときすっげぇ後悔したんだよ。お前のこと諦めるんじゃなかったって。
もうあんな思いをするのはごめんだ。
他のもんならなんでもいい。
だけど、お前だけは渡したくない。
「おら。てめぇはとっとと行け」
「ちょ……!痛い、蹴んないでよ!」
「行け」
ピシャリ。
こいつを教室から出すと、俺は強くドアを閉めた。
最後にあいつの不安そうな顔が見えたが気がする。だけど気にしない。
今は気にしてられない。
だってやっと、こいつと堂々と話せる日が来たから。
この空間には、俺とあいつの元カレだけになる。
振り返るとそいつ……戸田直人は、ふっと余裕な笑みで教室の中にある机に座って、足を組んだ。
「…………」
「…………」
異様な空気が漂っている。
一瞬でも気が緩めば、こっちの負けな気がした。
先手必勝。もうなりふり構ってられるか。


