お粥を全部食べ終え、薬も飲んだこいつは、再びベッドに横になった。
「佐野」
「ん?」
「……ありがとね」
こいつが俺に礼を言った。
ズルくて、逃げてばかりの俺に。
偽りのヒーローに、ありがとうって。
「佐野がいてくれてよかった」
「……なに言ってんだよ。俺はいつでもいるだろうが」
「……そっか。そうだよね」
おかしそうに微笑むこいつは、そっと目を閉じた。
「……寝るのか?」
「うん。ちょっと眠くなってきた。
……あ、佐野帰っちゃう?」
パッと目を開け、不安そうに俺に聞くこいつ。
いつもよりくっきり二重のまぶたは、しんどいということを暗示している。
「今いるっつったところだろーが。ばーか」
そっと、小さな手を握ってやった。
「うん。そばにいて。今だけは……」
しんどくて弱ってたのか、そんな弱音を吐いたこいつ。
思わぬ言葉に、俺の心臓が騒ぎだす。
今だけ?そんなの無理だ。
もう遅いよ。俺がお前に惚れた時点で、お前は諦めるしかないんだ。


