家に着いて、あたしを降ろしてくれた佐野はカバンを渡してくる。 「おら。これ」 あたしはそれをうつむきながら受け取った。 さっきまで背中ばっか見てたから、いざ面と向かうと、すごく恥ずかしい……。 「じゃあな」 そんなあたしを気にもとめず、佐野は自転車のペダルに足をかける。 ……言わなきゃ。 「さ、佐野!」 「……?」 あたしは行ってしまう前に、佐野の制服の裾を掴んだ。 そして、 「送ってくれてありがと」 それだけ言って、パッと手を離す。