でもそれは、あたしも同じか。
声を震わせて、みっともない。
あたしが先に笑い飛ばして言えてたら、こんな緊張しなくて済んだ。
風だけが、静かにあたし達の間を吹き抜ける。
ドキドキと騒いでる体の熱を、冷ましていくように、優しく。
……ねぇ佐野。
あんたのそういうの、思わせぶりって言うんだよ。
あたしばっかりドキドキして、ムカつく。
だから、〝冗談だ〟って言ったあんたに、ちょっとイジワルしてやる。
「……佐野、さっき部屋であたしにキスしようとしたよね?」
ここぞとばかりの、疑問を投げかけた。
その瞬間、動揺した佐野がバランスを崩して、自転車は不安定になる。
「ちょ、ちょっと!ちゃんと運転してよね!」
「ばっ!てめぇが変なこと言うからだろ!?」
……だって。
「……本当にそう思ったんだもん……」


