【完】こいつ、俺のだから。





罪悪感っていうのかな?



だってあたしは佐野の恋人役であって、本当の彼女じゃない。



なのに、佐野の家の人たちは、会ったばかりのあたしに優しく接してくれた。




「なんだか騙してるみたいで、申し訳ない気分……」



「…………」




流れる風景を見ながら、自然と出てきたあたしの本音。



佐野は耳を傾けながら、安定の速さで自転車を漕いでる。



その速さが心地よくて、まだもうちょっと、この道が続けばいいのにって思ってしまった。




「……じゃあ」




チラリ、後ろを振り返った佐野。



目が合うと、すぐに逸らすようにまた前を向く。



「?」



どうしたんだろう?



まるであたしの様子を伺うように、こちらを向くか向かないかのところで、また前を向いてしまう。



後ろから見える佐野の耳が、少しだけ赤い気がするのは、夕日のせいだろうか?



それとも他に、理由があるのかな?


そんな気がした。





だってほら、



一瞬戸惑いがらも振り返った佐野の顔が、





「本当の、彼女になるか?」




こんなにも赤いから。