「今日は、悪かったな」
「え?」
佐野が突然謝ってきたから、びっくりして顔をあげてしまった。
やっぱりその顔は、よく見えない。
だけど代わりに、佐野の広い背中があたしの視界を覆った。
「急に親が帰って来たから、あいさつさせちまっただろ?」
彼女としての、と佐野は付け足す。
「あぁ……あれ? 別にあいさつすること事態は全然大丈夫。気にしてないよ」
これは本当のことだ。確かに急に現れたのはびっくりしたけど、イヤだとか思わなかった。
「……ただ……」
「……? ただ?」
聞き返す佐野に、あたしはポツリとつぶやいた。
「彼女のフリだから、あんな優しくしてくれるお母さんと亜里沙ちゃんに、すごく申し訳ないなぁって思った……」


