さっきから心の声でツッコんであげてたけど、さすがに最後のは無理があった。 バカでもさすがに自転車から転落したら、ケガはすると思うな。 「バカは風邪をひかないんだよ、佐野」 「いいからとっとと掴まれや。おら」 佐野は無理やりあたしの手を掴み、自分の腰へと回した。 ……ドキン。また胸が高鳴る。 自転車はそんなあたしの気持ちを知らず、サァーッと安定のスピードで駆け抜けていく。 ……落ちちゃ、いやだもんね。 そう自分に言い聞かせ、佐野に回された手を、ほんの少しだけギュッとした。