あたしのわかりやすいそれを、佐野は肯定と捉えたらしい。



「今更何に緊張してるんだよ?
今までみたいにうるさいお前はどこいった?」



わからないの?


こんな状況で、いつもみたいにいられるわけないじゃん。



だって……



「……ふたりっきりだし」



「はぁ?いつもふたりじゃねぇかよ」




佐野が少しだけ、あたしに近づく。



「こんなの、今更恥ずかしがることじゃねぇだろ。少しは慣れろよ。
その……俺らはもう、付き合ってんだし……」



あたしの手に触れる、佐野の大きな手。



触れられた部分が熱を帯びて、心臓がドキドキとする。




「それともお前は、俺が彼氏に見えねぇのかよ……?」



「っ」



覗き込まれて、佐野と間近で目が合う。



前髪のかかってる佐野の目は、少し揺らめいていた。